第一话 第17首 在原业平朝臣 千早振(ちはやぶ)る　神世(かみよ)も聞(き)かず　龍田川(たつたがは)　韓紅(からくれなゐ)に　水絞(みづくく)るとは 第16首 中纳言行平 立別(たちわか)れ　因幡山(いなばのやま)の　峯(みね)に生(お)ふる　松(まつ)とし聞(き)かば　今歸來(いまかへりこ)む 第二话 第13首 阳成院 筑波嶺(つくばね)の　峰(みね)より落(お)つる　男女川(みなのかは)　戀(こひ)ぞ積(つもり)て　淵(ふち)と成(な)りぬる 第三话 第12首 僧正遍昭（良岑宗贞） 天風(あまつかぜ)　雲(くも)の通路(かよひぢ)　吹閉(ふきと)ぢよ　乙女(をとめ)の姿(すがた)　暫留(しばしとど)めむ 第四话 第22首 文屋康秀 吹(ふ)くからに　秋(あき)の草木(くさき)の　萎(しを)るれば　宜山風(むべやまかぜ)を　嵐(あらし)と云(い)ふらむ 第五话 第9首 小野小町 花色(はなのいろ)は　移(うつ)りにけりな　徒(いたづら)に　我身世(わがみよ)に經(ふ)る　長雨(ながめ)せし間(ま)に 第8首 喜撰法师 我庵(わがいほ)は　都(みやこ)の辰巳(たつみ)　然(しか)ぞ棲(す)む　世(よ)を宇治山(うぢやま)と　人(ひと)は云也(いふなり) 第七话 第50首 藤原义孝 君(きみ)が為(ため)　惜(を)しからざりし　命(いのち)さへ　長(なが)くもがなと　思(おもひ)ける哉(かな) 第54首 仪同三司母（高阶贵子） 忘(わす)れじの　行末迄(ゆくすえまで)は　難(かた)ければ　今日(けふ)を限(かぎり)の　命(いのち)ともがな 第八话 第42首 清原元辅 契(ちぎり)きな　互(かたみ)に袖(そで)を　絞(しぼ)りつつ　末(すゑ)の松山(まつやま)　波越(なみこ)さじとは 第51首 藤原实方 斯(か)くとだに　えやは伊吹(いぶき)の　蓬草(さしもぐさ)　さしも知(し)らじな　燃(も)ゆる思火(おもひ)を 第九话 第62首 清少纳言 夜(よ)を籠(こ)めて　鳥(とり)の空音(そらね)は　計(はか)るとも　世(よ)に逢坂(あふさか)の　關(せき)は赦(ゆる)さじ 第十话 第55首 大纳言公任（藤原公任） 瀧音(たきのおと)は　絕(た)えて久(ひさ)しく　成(なり)ぬれど　名(な)こそ流(なが)れて　猶聞(なほきこ)えけれ 第十一话 第57首 紫式部 巡逢(めぐりあ)ひて　見(み)しや其(それ)とも　判(わか)ぬ間(ま)に　雲(くも)が隱(くれ)にし　夜半(よは)の月哉(つきかな) 第十二话 第63首 左京大夫道雅（藤原道雅） 今(いま)は唯(ただ)　思絕(おもひた)えなむ　とばかりを　人傳(ひとづ)て成(な)らで　言由(いふよし)もがな 第68首 三条院 心(こころ)にも　在(あ)らで憂世(うきよ)に　長(なが)らへば　戀(こひ)しかるべき　夜半(とは)の月哉(つきかな) 第十三话 第97首 藤原定家 來(こ)ぬ人(ひと)を　松帆浦(まつほのうら)の　夕凪(ゆふなぎ)に　燒(き)くや藻鹽(もしほ)の　身(み)も焦(こが)れつつ